珠洲だより

                       2010年

 
vol.4 「藤田美貴子さんを訪ねました」    2010.3.7

整経台
茨城県つくば市の工房兼自宅は羽田空港から車で1時間半程の場所にありました。

姉である藤田美貴子さんの仕事場を訪れるのは実は初めて。かわいい姪っ子2人とご主人が、自宅へ向かう前に私の好きそうな場所をいくつか周ってくれました。
今井美智さんが個展をする“Shingoster LIVING”や、須田さんのご縁で“Cafe & Gallery MEMORIES' ”さんなど。中でも出張旅行冒頭から“須田帆布”さんとの素敵な出会いがあり、春からの仕事の元気をもらう出足となりました。

彼女は子供たちを送り出す間に家事をテキパキとこなす。私は仕事場を見せてもらうため2階へ。織機(写真下)の後ろには縦糸の長さと本数を計り巻き取る整経台(写真左)、天井付近にはずらりと糸が詰まったケースが並ぶ。

午前中の光が気持ちよく入るこの部屋で「たんたん、つぅ〜、たんたん、つぅ〜」と懐かしいあの音を出しながら織っているのかと想像した。

天井から吊るされた一列に並ぶフック。これはいったい?
なんと経糸を各糸巻きから引き上げ整経台へと絡まないように送り込むれっきとした道具。

一部屋まるごとコンパクトに道具化され、きっちりとした彼女らしい仕事場のように感じた。 

壁にきれいに積まれた糸巻き


横糸を入れられる状態にするまでの準備が8割だという。

寸法に対しての経糸の数・長さを割り出し、 男巻き棒というかっこいい名前の機にかける棒に結ぶ→横糸を交互に織り込んだり、柄を作り出す役割をする筬と綜絖に糸を通す→手前の織り出し棒に結ぶ→糸の緩みがないか見て張る。

糸を染める仕事があれば工程数はさらに増えますが、織る前の工程だけでもこれだけの作業がある。

筬と綜絖は経糸の本数だけある。つまり一本一本鈎針のような道具で小さな穴や間に通す作業があるということ。経糸一本を張るために結ぶ→通す作業を各部所で行わなければならない。抜けていたりゆるんでいたりしてはいけないため、ひとつひとつの作業が正確で均等でなければならない。言葉以上に大変な作業なだけに、想像するだけでいつも肩がこる。
経糸がかかっていない機は、気持ちよく休んでいる感じ。一端糸が張られると、彼女とともにしっかりと働く。


機のすぐ横の壁には、弥勒菩薩のポスターが貼られていた。(写真上)
凛とした微笑みで仕事を見てもらっている彼女の姿勢そのものが、織りにすべて現れていると私は思います。
織機                                          ランチョンマット・ティーマット 座布団(オーダーサイズ)  色紙掛

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