珠洲だより

    2010年

 
vol.6  「遠見和之さんを訪ねました」    2010.4.7
能登空港から車で約15分ほど山手に入っていった集落に遠見さんの工房があります。
小さな川と工房前の畑がその時折の季節を感じさせてくれます。
おじいちゃん、お母さんそして和之さんと引き継がれ、三井の自然から採取した素材を使って手漉き和紙をされています。
随分前から遠見さんの和紙を扱わせていただいているのに、今まで知らなかった事がたくさんありました。
一枚の和紙ができあがるまでの様々な工程は、ここに書き留める以上に地道で淡々とした作業だと思いました。
私たちの側にある自然からこうしてうまれる素材に、改めて驚きと尊い命を感じます。
手漉き和紙の映像としてよく見られる漉いている場面は全工程からすれば約一割ほどだそうです。その他の工程をご紹介したいと思います。

漉き場横には杉皮がどっさり。
これをカットして余分なモノを取りきれいに洗う。


やわらかくなった素材を山水を利用してきれいに洗う。アルカリ成分を抜くと同時に漂白効果もある。(真っ白の紙にする際はこの後に薬品を利用して色を抜きききれいに洗う。)

ぎざぎざの金属の車輪が周り、繊維をつぶしてほぐしていく。但し、楮だけは繊維が強いため手で木を使って叩いていくそうです。かなり原始的なやり方にびっくり!

大きな石の舟の中にぷかぷか浮いているのは繊維。漉く際に繊維を絡めやすくするためのノリを水の中に一緒に入れ混ぜている。
坂を利用(?!)した大きなお釜の中でアルカリ性溶液を加えやわらかくなるまで煮る。 そして、水の中で広げながらごみなどのちりを丁寧にとっていく。
そして、水の中で広げながらごみなどのちりを丁寧にとっていく。
この時点で紙の種類によっては墨付をよくする鉱料などを配合したりする。この時点で紙の種類によっては墨付をよくする鉱料などを配合したりする。





漉いては重ねを繰り返して、淡々と作業をする。
まだ湿っている紙を一枚ずつ剥がし、鉄板の上で乾燥させる。このストーブの上部にはお水が入っているため、
竹ひごや萱で編んだ?桁。
漉くサイズによってさまざまな大きさの?桁はとても美しく並び、出番を待っている。
漉き方には2種類
*溜め漉き・・紙料を?桁の上に溜、緩やかに縦横に揺り動かし、余分な紙料を?の網目から落とす。(厚手のもの ハガキetc)
*流し漉き・・すくった紙料を?桁の上で揺すり、薄く紙の層を形成したら余分な液を漉き舟に流し戻す。揺すりを数回繰り返す

紙の重さによって水が滴る。 薪で温められたお湯が、ゆっくり鉄板を温め、紙を乾かしてくれる。真冬の作業は暖になってくれるでしょうが、真夏は逆に暑いだろうとため息が出てしまいました。
最後に、つくっている時に考えている事ってありますか?との問いに
言葉にすることが苦手だという遠見さんがしばらく悩み、「いつも自然体でいること」と応えてくださった。
遠見さんらしい応えにほっとあたたかい気持ちになり、お願いしていた和紙を抱えて三井の自然を浴びながら工房をあとにしました。
 

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