珠洲だより

                       2012年

2012/1/13      矢野太昭さんの工房を訪れました! vo.4
  
 備前を離れ、矢野太昭さんに会うために岡山へ。

 昨年の「正倉院の夢」展で装飾品をはじめ、蓋物を出して下さった。Yグラスと名付け、モザイクガラス、コアガラス、吹きガラスの技法を組み合わせて独自のガラス作りをしている。ガラス以外にもフレスコ画、彫刻まで手がける。
 
 異素材を扱い平面から立体までされる矢野さんの工房は自宅のマンションの1室。あまりにもコンパクトな作り手の現場に驚く。以前訪ねた仁平幸春さんの時にも感じましたが、実に無駄がない。1m×50cmほどの机が2つ。1つはガラス用、もう一つは彫刻やそれ以外の作業用。

 ガラスも手のひらサイズの作品が主なため、バーナーと小さな電気炉、その周辺にアクセサリー用の銀のパーツやガラス棒が手の届く範囲にすべて収まっている。

 今回一番見たかった「金太郎飴」、いやいやガラスのパーツを見せてもらった。アクセサリーや蓋物のモザイクに使われている鳥や女性の顔は、金太郎飴をつくるようにガラス棒で目やそれぞれのパーツを作り1本にしたものをカットしていく。

 ガラス棒の言えば、断面によってつくられている。
 
 お寿司の細巻き程から作り伸ばしていると思っていたのが、たった1pほどの中に表情まで作り込んでいくという。

 気の遠くなっている私に矢野さんが、「この場所で逃げ出す時は、何よりもこのケースを持って出るかな〜」と言ったことからも、このパーツたちをつくるために、費やした時間とエネルギーが感じられる。
 
 種明かしをいくらしてもらっても、美しく小さな世界をつくる矢野さんはマジシャンのように見え、魅惑的なものをとじこめていつまでも解けない謎解きをさせられているようでした。

 先史時代から今日まで、小さなガラス玉は多くの人を魅了させてきました。
光を通し輝くガラスの美しさは時代を超え地域、文化を超え残されてきたものです。
ちいさな世界に集約した矢野さんの手業は、私には宝石以上に魅力的な存在です。ピアスも穴がふさがってしまうほど、装飾品を付けなくなって久しいのですが、矢野さんの装飾品に出会い変わりました。自分がそれを身に着けようと鏡の前に立ち、着けている瞬間女性であることを意識します。そんな些細な気持ちをいくつになっても忘れたくないと思います。

 5月の「春の舟あそび 〜美しきものを手から手へ〜」の企画で、矢野さんの装飾品[ネックレス、イヤリング、指輪、ペンダントトップ]などが並びます。
 新しい試みのものも加わるそうです。私もピアスをお願いしてきてしまいました。

 矢野さんのフレスコ画や彫刻の作品もまたご紹介できたらと思います。
 

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