珠洲だより

                       2012年

2012/2/5  下村豊さんの工房を訪れました! vo.8
 
 今年の10月に展覧会をお願いしている下村豊さんのアトリエを見せていただきました。

 下村さんは和紙や布に鉄や銅を腐食させたものを転写して、作品をつくられています。
 Gallery 無境の塚田さんとの企画展で、作品を扱わせていただいてからのおつきあいです。
 鉄の朽ちたドアを拾ってくるぐらい、錆色の好きな私なので、下村さんの錆色の美しさ、青の神秘的な世界に一目で惹かれました。いつか展覧会をと願っていたお一人です。まずは制作を行っている場所へ。

 鉄を腐食させるには、湿度と時間がとても重要な鍵となります。右の写真は、ほんの少し時間を置きすぎてしまい、和紙が剥がれなくなってしまったそうです。
 左の写真はちょうど転写しているもの。この作業をしている時は、天気予報を一日何回も見て、窓の開け閉めをするなど温度と湿度を調整しタイミングを計る。それは剥がれるぎりぎりのところが最も美しい色になるそうです。

  和紙は金沢 二俣の斉藤さんの和紙を使われています。いろいろ試して、齋藤さんの和紙が一番だったそうです。
  和紙に転写する場合、寒い時期しかできず、暖房はもちろんかけられないため、説明を聞いている間、北陸育ちの私もさすがに底冷えを感じ、手足が冷たくなってしまいました。湿度を含んだひややかな部屋での作業、重たい鉄板を抱えて作業するため、身体への負担もかなりかかるという。

 感覚と忍耐そして、化学の世界から生まれる作品。下村さんの過去のあらゆる経験をもとに、積み重ねられたものが集約された1枚であると実感。
 
 錆を転写して約40年。ようやくその感覚がつかめてきたそうです。 
 左の写真は布に鉄を転写した色。錆色と青色。同じ鉄色とは思えないほどそれぞれ美しい。

 この後、作品を保管してあるご自宅に行き、過去の作品や、パネルにしていないできたてほやほやの作品を見せていただきました。

 宇宙の銀河の世界のように浮かび上がる青。

 今は亡きあの人に、見せたかった・・・。
 

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