珠洲だより

                                 2011年

 
vol.3  「角 有伊さんを訪ねて」     2011.2.7
    春の企画、「ごはん茶碗とカレー皿」展のこともあり角さんの工房を訪ねた。

  私自身、ご飯と汁椀を毎朝漆器で食べているのに、今回の企画に漆器を入れようかどうしようか悩んでいた。陶磁器の作り手でかなりの数になりそうだから、漆器の作り手を頼み始めると見る方も大変。

  以前、県外からわざわざ輪島塗の椀を探しに来られた方が、「たくさんありすぎて輪島で絞りきれなくて・・。」とお店に来られた。かえってありすぎると選べれないのも事実。

  とはいえ、能登の地で漆器の良さを伝えられないのは、まだまだ力不足。昨年の暮れ、合鹿椀の手に収まる感覚を味わっていたため、ずっと憧れだった角さんの合鹿椀にやはり会いに行こうと思った。

  私が何を言い出すことかといつも構えるような姿勢をとりながら、実はとても協力的な有伊さん。「合鹿椀が見たい」という私のリクエストに、次から次へと椀を持ってきて下さり、気が付くと、同じように見えて別物の合鹿椀がずらり。(右の画像→) 

梧桐書院 定価2,000円
  木地を縦にろくろで引いたもの(縦木)と、横にして引いた(横木)ものとでは、強さと安心感、洗練されたラインと品、それぞれの持ち味が違う。そして口の周りを紙で補強したもの、布で補強したものなど、一つの椀ができあがるまでの試行錯誤の跡がそこにはありました。定番の椀は一つのデザインからではなく、いくつかの椀がひとつになったものといった感触でした。でも伺うと、自分の想いの形になるまで父、偉三郎さんは「ねばっこく木地屋へ通った。」と表現された有伊さん。
  木地のラインをお願いする時に、「30代のお尻みたいな色気の線」というから、ツーカーの木地師さんが「ねばっこく」通う角さんと、とことん向き合ってできたフォルムなのだと実感。

  春の企画には定番の合鹿椀が来ます。
でも今回工房に伺い、変わらないように見える合鹿椀も少しずつ進化していることを感じました。それは現代(いま)を生きる有伊さんの眼で仕上がりを決めているということ。これは分業の世界である漆にどこでよしと判断するかということ。また、生きている素材=木地、漆を様々な環境の中で世に出せるものを選びだし送り出していること。
 お父さんとは違う荷を担ぎ、しっかり漆の色気と温かさもつ椀にこだわる有伊さんからの合鹿椀が楽しみです。
父・偉三郎さんの魅力が詰まった一冊です! 
 

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