珠洲だより

                       2012年

2012/1/13  石田彩(たみ)さんの工房を訪れました! vo.6
 榎本勝彦さんの工房を後にして、石田彩さんの工房へ。
 一転して曇りガラスの自然光の側で光をためているガラスの世界にうっとり。
 
 矢野さんが石田さんの元へ案内して下さった理由がすぐに分かりました。昨年、矢野さんが参加して下さった「正倉院の夢」展のイメージにぴったりの作品がいたるところにありました。

 正倉院の宝物にある白瑠璃碗と同じように、円形切子が並び、互い違いに重なり合うことで亀甲文様となっている。またその切子の凹凸レンズ効果で反対側の切子が映り、ガラスの世界に吸い込まれるような不思議な錯覚になる美しさ。
 あの白瑠璃碗がつくられたばかりの姿によみがえり、品よく佇んでいるようにすら見えました。

 石田さんは吹いてもらったガラスをひたすら研磨して自分の形にしていく。研磨といっても厚みのあるガラスを必要な部分だけ残していくと言えば分かりやすいでしょうか。うん、言葉で言うと1行で終わるけれど、堅く割れやすいガラスをここまでするにはそうとうな忍耐力と根気が必要です。

 研磨の機械は今1つでされていて、粗削りと仕上げとに分けて、ある程度形を出していくそうです。
 もちろん作業中は全身ガラスの粉だらけの状態で、水中眼鏡のようにあてている後もしっかり顔に残るため、ちょっと買い物へというわけにはもちろんいかない。 
 機械である程度仕上げた後は、小さな道具やパウダーを使って手でひたすら磨いていくという。「テレビがお友達になるんです。」と、にこにこしながら話している石田さんがとても頼もしく見えてしまいました。
 「研磨しかできなかったから。」と謙虚に話す石田さんは、2007年に大英博物館の複製制作に携わっている。1つのことをやり続ける強さを感じます。

 ものによっては、後からガラスをくっつけたほうが楽じゃない?というものがある。多分、そうした方が楽なものばかりだと思う。
 でも石田さんは研磨して残すことを選択している。
これは石田さんの実物のガラスを見た人なら、残すことを選択している石田さんの思い[表現]を感じることができると思う。
 ものつくりの産みの大変さは言葉を並べて説明するものではない。ものから自然に伝わるものだと、改めて石田さんの作品から感じました。

 右の写真は、石田さんのコレクション。
飛行機のプラモデルが並んでいた榎本さんもそうでしたが、“大切にとっておきたい何か”がそこにはあり、ものが産まれる場所を見せてもらうのは本当にわくわくする。
 今回も忙しい作り手の方々に無理をいって見せていただけたこと、本当に感謝しています。

 石田彩さんには「正倉院の夢」展の第2回目に参加していただけるお返事をいただきました。楽しみです!

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